事業用定期借地権

Q.定期借地権には、どのようなものがありますか。この種の契約は、公正証書でした方がよいのでしょうか。

A.定期借地権には3種類あります。① 一般定期借地権、② 建物譲渡特約付借地権、③ 事業用借地権です。
  ① 一般定期借地権は、存続期間を50年以上と定める代わりに、更新を認めず、建物買取請求権を行使しないものです。更新を認めない旨の特約は書面でしなければならないものである上、契約期間が長期になりますので、紛争予防のためには公正証書によって契約することが望ましいといえます。
  ② 建物譲渡特約付借地権は、借主が借地権を設定した日から30年以上経過した後に借地上の建物を土地の貸主に譲渡するという特約付で設定するものです。この特約があるときは、契約は更新されず、貸主は借主が建築した建物を買取時における相当の対価で譲渡を受けて借地権を消滅させることができます。この借地権は、内容的に複雑であり、また、長期間になりますので、紛争予防のためには、公正証書による契約が望ましいといえます。
  ③ 事業用借地権は、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とし、従来(平成4年~平成19年)は、存続期間が10年以上20年以下に限られていました(20年から30年までの定期借地権がありませんでした。)が、平成20年施行の改正法により、10年から50年までに広げられました(借地借家法23条)。
  事業用借地権は、更新が認められず(事業を継続したい場合には、地主の合意を得た上で再契約をすることになります。)、建物買取請求権もありません。公正証書によらなければ設定することができず、公正証書によることが必須の契約です。公正証書による契約によって、初めて事業用借地権が成立します。事業用借地権は、「専ら事業の用に供する目的の建物」の所有が前提ですので、建物の一部であっても従業員のための寄宿舎を設けたりすることはできません。
  借地借家法23条の事業用借地権は、1項の借地権(30年以上50年以下)と2項の借地権(10年以上30年未満)に分けられます。どちらも「契約の更新」、「建物の再築による存続期間の延長」、「建物買取請求権」はありません。分けられている理由は、30年以上の事業用借地権は、普通借地権との区別をつけるために、貸主と借主との間で上記3つの要素がないことを明確に約束しなければなりません。これに対し、30年未満の事業用借地権は、普通借地権と区別をする必要がありません(30年未満の一般の借地契約は借地借家法で30年とみなされてしまいます。)ので、事業用であることを明確には定めなくとも良くなっています(実務上は、確認のため、3つの要素のないことを明確化しています。)。ですので、普通借地権との区分けをする必要があるかないかの相違だけで、実質的な相違は借地期間の点以外にはないことになります。

Q.そもそも定期借地権制度を創設した目的は何ですか?

A.旧借地制度の最大の問題点は、地主にとって、① 借地が事実上返還されないこと、② キャピタルゲインが地主から借地人に移転してしまうこと、③ 地価上昇に見合う地代収入が得られていないこと、以上のことから、新たな借地が創設されることが期待できなくなりました。そのため、都市部における土地の供給が著しく制限され、健全な街づくりが阻害されてしまうこともありました。
  そのため、貸した土地が地主に必ず戻り、期間満了での立退料も必要なくなり、地主が安心で貸すことができる制度創設の必要に迫られ、平成4年に借地借家法が施行されました。その目玉が定期借地制度です。すなわち、① 契約の更新、② 建替による借地期間の延長、③ 建物買取請求権の3つの要素がない借地権=定期借地権制度が創設されました。バブル崩壊とともに、土地神話も崩壊しましたが、これにより土地は、所有の時代から、利用の時代へと価値観が大きく転換しました。
  定期借地権は、地主と借地人との間の重大な権利関係を規律するものですから、公正証書を用いるなど厳格な方式による契約が求められています(例外として、建物譲渡特約付借地権は口頭でも可)。
  現実問題として、今後、普通借地権が新たに創設される可能性は少なくなると思われますので、定期借地権をいかに賢く利用していけるかが、まちづくりにとって重要な課題になるわけです。