離婚給付契約

Q.離婚給付契約の公正証書とは、どのようなものですか?

A.離婚の方法には、① 当事者間の協議による離婚(協議離婚)、② 家庭裁判所の調停手続による離婚(調停離婚)、③ 離婚の訴えを提起して判決を得て行う離婚(裁判離婚)があります。公証役場で取り扱うのは、①の協議離婚です。協議離婚は、戸籍法による届出によって効力を生じますが、離婚に伴って、お子様の養育費の取決め、面会交流の取決め、財産分与・慰謝料の取決めなどが協議されることになります。当事者間に合意が得られた場合、その合意内容を「公文書」にしておけば安心です。それが、離婚給付契約の公正証書と呼ばれるものです。

Q.離婚給付契約公正証書では、どのような内容から成り立っていますか?

A.いろいろなケースがあります。通常は、① 離婚の合意・確認(親権者の指定)、② 子どもの養育費の定め、③ 面会交流の定め、④ 財産分与の定め、⑤ 慰謝料の定め、⑥ 年金分割の定め、⑦ 住所変更等の通知義務、⑧ 清算条項(円満解決の確認、プライバシーの尊重)、⑨ 強制執行認諾から成り立っています。ただし、当事者のご意向により、上記のうちの一部だけを公正証書に盛り込むこともありますし、他の内容を盛り込んでほしいと希望されることもあります。

Q.養育費の定めとは、どのようなものですか?

A. 夫婦に未成年者の子があるときは、その親のどちらかが親権者になります。子を引き取って育てる親に対し、もう一方の親が子の養育のための費用を支払う約束をするのが養育費支払約束です。親は、子に対する扶養義務を負っていますし、反面、子は、親に対して扶養請求権を有しています。この権利は放棄することができません。よって、親同士で養育費を支払わない旨の約束をしたとしても、その約束は法的に効力を生じません。そのような約束を親同士が取り交わしたとしても、裁判所は、この約束を無効と解釈して認めませんので、養育費(扶養請求権)として請求されてしまいます。
  公正証書には、養育費支払の始期と終期を書くことになります。通常の始期は公正証書作成の月又は翌月、終期は18歳とする場合、20歳とする場合、22歳になった最初の3月とする場合が多いようです。嘱託者の希望で「大学卒業の月まで」と書くこともありますが、裁判所から「終期が不明確(浪人や留年があり得るので、大学卒業の月が確定できていない。)であるため、強制執行ができない」と判断されることもありますので注意してください。

  養育費は、通常、月額いくらということで定まります。その金額は、双方の財産や収入状況など一切の事情を考慮して決まることが多いようですが、基準となる考え方として、いわゆる養育費一覧表が裁判所の実務として定着していますので、これを参考になさるのもいいと思います(詳しくは「裁判所 養育費一覧表」をご覧ください。)。

Q.養育費の定めの中で、子どもの進学、病気や怪我などで多額の費用が必要になる場合を定めることもできますか?

A.できます。この場合、公正証書に、「進学や重大な病気や怪我で特別の費用が必要な場合は、双方が誠実に協議して定める」などと記載することになります。

Q.面会交流の定めを入れることはできますか?

A.できます。例えば、離婚に際し、親権者が母親になった場合、親権者ではない父親が子どもと面会することを面会交流といいます(以前は「面接交渉」といいました。)。この権利も放棄することができない権利ですので、「面会交流しない」などと約束しても、その約束は無効です。同様に、「養育費を支払わない場合には面会交流をさせない」という約束も法的には無効になります。ただし、面会交流実施により子の福祉に反する結果になることが強く予想される場合などは面会交流を一時停止することはできると考えられています。
  条項例としては、「乙(母)は、甲(父)に対し、丙(子)と面会交流することを認める。具体的な面会交流の日時、場所、方法は、甲と乙が協議して定める。」などと記載します。

Q.連絡先の通知義務を入れることがあると聞きましたが、どうしてですか?

A.当事者間の養育費の支払や面会交流などをスムーズに行うためです。また、特別の事情が発生したとき、相手方に連絡する必要もあります。勤務先変更も通知義務に入れることがあるのは、万一、養育費の支払が滞った場合に強制執行の手続をスムーズに進められるからです。

Q.財産分与とは、どういうものですか?

A.婚姻中に夫婦の努力によって形成された財産を離婚に当たって清算することです。例えば、婚姻中にマイホームを夫名義で建てたが、離婚に当たり、妻側の潜在的な持分(例えば50%)を分与します。建物の持分をそのまま分けることもありますし、持分相当額の金銭を分与することもあります。住宅ローンが残っている場合には、住宅ローンの実質的な負担者を変更することもあります。例えば、金融機関にローンを支払う債務者が夫であった場合、債務者を妻に変更するよう申請しても、その申請が通らないことも多いので、夫側の債務者である地位を変更しないまま、実質的に妻が住宅ローンを支払い(代位弁済といいます。)、妻と子がその住宅に居住し続けるという約定を結ぶこともあります。
  財産分与には、扶養的な要素もあるといわれています。離婚した妻に生活能力がない場合には、月々の生活費の援助分を支払う約定を取り決めることがありますが、これは扶養的財産分与といわれるものです。また、財産分与に慰謝料的な要素を盛り込むことができるという考え方もあります。この場合には、名目は財産分与でも、実質は慰謝料の支払になります。

Q.年金分割の定めとは、どういうものですか? 

A.年金分割制度は、婚姻期間の保険料納付記録の多い者(第1号改定者)からその少ない者(第2号改定者)に当該標準報酬総額の一部を分割することにより、老齢厚生年金について分割後の標準に基づいて双方の年金額が計算され、支給されるものです。年金分割の割合は、50%(0.5の割合)とされることがほとんどです。年金分割の公正証書の作成に当たっては「双方の基礎年金番号」(年金手帳に記載のある10桁の番号)の情報が必要になります。
  

Q.離婚給付の公正証書作成の相談をするに当たって注意する点があれば、教えてください。

A.夫婦間で、離婚給付契約の内容を確定させてから、公証役場にご相談願います。夫婦間で離婚給付の内容が確定しないままでは、公証人は、公正証書を作成することができません。双方の話合いが難しい場合は、家庭裁判所の調停手続をお願いします。
  以下の点は、あらかじめ夫婦間で話し合って決めておいてください。できれば、メモなど書面にしておいてください。インターネットで検索すると、離婚給付契約書のモデル案がいくつかでています。これを利用なさるのもいいと思います。
1.未成年の子がいる場合、子の親権者、養育費の金額、毎月の支払期日、支払方法(銀行振込みにするか)、始期、終期(例えば、18歳なのか、20歳なのか、22歳になった後の最初の3月なのか)
2.慰謝料がある場合は、金額、支払期日、支払方法
3.財産分与をする場合、不動産ならばどの物件(その物件の登記情報が必要です。)にするか、金銭ならば金額、支払期日、支払方法
4.面会交流に関する事柄(例えば、面会交流の回数を原則1か月に1回とするなど)
5.年金分割を請求する場合は按分割合(原則は0.5)
6.公正証書の作成を離婚届提出前にするか、後にするか(通常、離婚届出前に作成なさる方が多いようです。)

Q.離婚給付公正証書の例をみせてください。

A.以下に、一例を示します。
【離婚給付契約公正証書】
 本公証人は、当事者の嘱託により、離婚給付契約に係る陳述の趣旨を筆記し、この公正証書を作成する。
第1条(離婚届出)
 夫・〇〇〇〇(以下「甲」という。)と妻・〇〇〇〇(以下「乙」という。)は、双方間の長女・〇〇〇〇(平成〇〇年〇月〇〇日生。以下「丙」という。)の親権者を母である乙と定め、各自、離婚届に署名した上、乙において速やかに届け出る(以下「本件離婚」という。)。
第2条(養育費)
 甲は乙に対し、丙の養育費として平成28年〇〇月から丙が満20歳に達する日の属する月まで、毎月末日限り金〇万円ずつを乙の指定する口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は、甲の負担とする。
2 甲及び乙は、第1項に定めるほか、丙に関し、乙に対し、中学校、高等学校、大学等の進学時、重大な病気又は事故時など特別な費用を要する場合は、互いに誠実に協議するものとする。
第3条(面会交流)
  乙は、甲に対し、丙と面会交流することを認める。具体的な面会交流の日時、場所、方法は、丙の福祉を考慮して、甲と乙が事前に協議して定める。甲が面会交流を希望する場合は、事前に乙に申し入れるものとする。
第4条(財産分与)
  財産分与について、各自名義の預貯金通帳に係る金融資産は、それぞれ各自が取得すること、互いに金銭その他の授受は行わないこととすることに合意する。
第5条(慰謝料)
 甲及び乙は、相互に、本件離婚に伴う慰謝料を請求しないものとする。
第6条(連絡先の通知)
  甲が勤務先、住所又は電話番号を変更したとき、乙が連絡先又は第2条1項に定める振込口座を変更したときは、甲又は乙は、速やかにその旨を相手方に通知する。
第7条(清算条項)
 甲及び乙は、本件離婚に際し、本公正証書の作成をもって全て円満に解決したことを相互に確認し、本公正証書に定めた事項以外に、名義のいかんを問わず、金銭その他の請求をしない。また、相互にプライバシーを尊重し、相手方の迷惑になる行為をしない。
第8条(強制執行)
  甲は、本公正証書に基づく金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する旨陳述した。